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<目次>
1 はじめに
2 THCに関する現行法の法規制
3 販売しているCBD製品からTHCが検出された場合の違法性について
4 販売しているCBD製品からTHCが検出された場合の実務運用とリスク
5 販売しているCBD製品からTHCが検出した場合に備えてのリスク回避措置
6 おわりに
1 はじめに
大麻に含まれる製品で、精神作用があると言われている成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノールの略)。
最近のCBDブームに大手企業が乗れていないのも、このTHCが検出されるリスクがあるためと予想しています。
しかし、THCに関する法的規制について、きちんと解説された文献や記事などは見当たらず、実際どう規制されているのか分からない事業者さんも多いと思いのではないでしょうか。
“THCが日本では違法とされているけどCBDは合法”という広告を見るけど本当?
”THCがCBDオイルから検出されちゃったら捕まるの?”
などという声は、私も法律相談以外の場でもよく相談されるので、「もし販売しているCBD製品からTHCが検出されたときの違法性について」というテーマで解説します。
2 THCに関する現行法の規制
⑴ 大麻取締法の規制
大麻取締法で規制される「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいうものの、大麻草の成熟した茎及びその茎から作られる繊維等の製品(樹脂を除く。)と、大麻草の種子及びその製品は規制対象から除かれるとされています(大麻取締法第1条)。
簡単にいうと、大麻草の中でも、(成熟した)茎と種子は、大麻取締法上の「大麻」には当たらない(=大麻ではない)とされています。
このように、大麻取締法の規制は、大麻草の部位に着目した規制であることから、“部位規制”と呼ばれています。
⑵ 麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻向法」)の規制
麻向法では、THCを「麻薬」として規制しています(麻向法第2条第1号、別表第一、75)。
THCのうち、大麻草に含まれているとされるTHCは、デルタ9とデルタ8とされているところ、麻向法が「麻薬」として規制しているデルタ8とデルタ9のTHCは、「化学合成反応を起こさせることにより得られるもの」、すなわち、“化学合成されたもののみ”を対象としています。
なお、麻向法での規制は、THCという成分に着目した規制であることから、“成分規制”と呼ばれています。
⑶ 小括
ここまでをまとめると、
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①大麻取締法上、大麻草の(成熟した)茎と種子は、大麻ではない
②麻向法は、化学合成されたTHC(デルタ8、デルタ9)を規制している
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ということになります。
2021年1月13日から6月11日まで計8回にわたって開催された大麻等の等の薬物対策のあり方検討会(以下「有識者会議」)でも、上記のような整理が事務局から説明されています。
![](https://static.wixstatic.com/media/3b2561_e784d50a8d334264ae2fb6f4bfa81e59~mv2.png/v1/fill/w_980,h_701,al_c,q_90,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/3b2561_e784d50a8d334264ae2fb6f4bfa81e59~mv2.png)
【出典】出典:厚生労働省第2回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」 資料
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【出典】出典:厚生労働省第2回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」 資料
ちなみに、このようなTHCの規制になった理由としては、
“大麻取締法は、昭和23年に制定されたということで、先ほど改正経緯の資料の説明を省略してしまいましたが、現在に至るまで、いわゆる大きな改正はなかったということです。 一方で、先ほどTHCとCBDのところで御紹介いたしましたが、そういった成分構造になっていると判明したのは1960年代ということです。本来的には、今は現場では、THCのあるやなしやで違法性を判断しているわけですから、どこかの段階で、運用実態に沿った法律構成にすればよかったのかもしれませんが、現状としては、昭和23年に制定され、1960年代にTHCという成分があるということが確認された一方、法律体系については変えてこなかったという状況です。”
と第2回有識者会議において、事務局説明がなされています。
3 販売しているCBD製品からTHCが検出された場合の違法性について
それでは、以上の整理を前提に、自社で販売しているCBD製品からTHCが検出された場合の違法性について検討していきましょう。
結論からいうと、
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大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出されたCBDのみを用いた製品であれば、違法ではない
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ということになります。
まず、大麻草の(成熟した)茎または種子は、大麻取締法上の「大麻」ではないので、これらの部位から抽出したCBDも「大麻」には該当しません。
それと同様に、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出したTHCも大麻取締法上の「大麻」に該当しないことになります。
THCは、麻向法で成分として規制されていますが、上記のとおり、これは化学合成されたものに限定されていますので、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出したTHCであれば、麻向法の規制もかからないということになります。
したがって、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出されたCBDのみを用いた製品であれば、違法ではないという結論になります。
さらに、日本のCBD輸入に関する実務運用上のルールでは、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出したCBDであることを証明書類のメール添付により証明しないといけないこととされているので、正規のルートで国内に輸入されたCBDは、原則として全て大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出したものであると考えられます。
そうすると、日本国内で正規のルートで販売されているCBD製品は、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出されたCBDを原料にしていると考えられるので、仮にTHCが検出された場合でも、違法ではないということになります。
4 販売しているCBD製品からTHCが検出された場合の実務運用とリスク
ここまでの話を前提にしても、以下の疑問があるのではないでしょうか。
“でも、実際にCBD製品からTHCが検出された場合は、厚生労働省が公表しているよね。あれって違法だからではないの?”
“違法じゃないってことは逮捕されることはないと考えていいの?”
これらについても、結論からいうと、
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・厚生労働省は、違法なものとして公表しているのではなく、違法の疑いがあるものとして販売済み製品の保健所への提供依頼をしています。
・逮捕される可能性はあります。
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となります。
これらについては、「違法」であることと、「違法の疑いがある」ことを区別して考えなければならず、実務運用としてTHCが検出されたらどう動くのかを知る必要があります。また、法律上、「逮捕」というのはなぜなされるのか、逮捕の目的も知る必要があります。
⑴ 厚労省の調査
もし、販売しているCBD製品からTHCが検出されてしまった場合の流れは以下のとおりとなります。
実際に、CBD製品からTHCが検出された2例についても、上記のような流れで進んだと推察しています。
なぜCBD製品からTHCが検出されても違法ではないのに、上記のような流れになるのでしょうか。
それは、THCが検出されることで、その製品が大麻取締法上の「大麻」に該当する疑いがあるとされているためです。
すなわち、
その製品の原料が、大麻草の(成熟した)茎または種子以外の部分から抽出したものではないか?
↓
もしそうであれば、「大麻」に該当するので、調査(捜査)する必要がある
↓
製品を回収して調査する
ということを行っているわけです。
もっとも、上記で整理したように、大麻草の(成熟した)茎または種子から抽出したTHCであれば、違法ではありませんので、このことで処分されることはないということになります(※)。
※例外として、①海外のCBD原料(アイソレートなど)やCBD製品を製造している会社が、CBDを大麻草の(成熟した)茎または種子以外から作成しており、②それを日本の販売業者が知っていた場合には、違法となります。
これらより、厚労省が行っているのは、違反事実を認めたうえでの行政処分としての“公表”ではなく、調査のための“製品の提供依頼”と整理されます。
もっとも、性質がどうであれ、CBD製品を製造・販売している事業者からすると、事業者名と商品名を特定されたうえで、その商品には「『大麻』の疑いがあります」と厚労省のHPで表示されるわけですから、それに伴うレピュテーション(信用)低下は避けられないものとなり、この点でTHCが検出されることによる不利益はあるといえます。
⑵ 警察からの逮捕される可能性
また、厚労省の調査とは別に、警察が“逮捕”に踏み切るということも可能性としてあります。
逮捕されるのは犯罪をした人というイメージがあるかもしれませんが、逮捕というのは、犯罪の嫌疑があり、証拠隠滅のおそれを防止するなどの必要性がある場合になされるものです。
そのため、違法行為ではなくとも、違法行為の疑いがあれば、逮捕される可能性というのは十分あり得るわけです。
ここで、THCが検出されることは、大麻取締法上の「大麻」に該当する疑いがあると考えられているようですから、販売しているCBD製品からTHCが検出されてしまった場合には逮捕される可能性があるといえます。
5 販売しているCBD製品からTHCが検出した場合に備えてのリスク回避措置
では、事業者として、THCが検出するというリスクに備えてできることはないのでしょうか?
THCが検出されたことによるリスクは、主に①厚労省に事実上公表されてしまうことによるレピュテーション(信用)低下リスクと、②①による製品が購入されない、あるいは返品されるなどの経済的損害のリスクがあると考えられます。
この場合、①レピュテーションリスクについては、厚労省が行う以上、回避する措置をとることは難しいです。
他方で、②経済的損害のリスクについては、契約書の文言でリスク回避をすることが可能です。
具体的な契約書の文言については、CBD原料業者、CBD製品の製造業者、CBD製品の販売業者の立場によって、入れるべきものが異なります。
例えば、CBD原料業者については、THCが検出された際のリスクについて責任を負わないという免責条項を入れるなどが挙げられます。
このように、経済的損害のリスクについては、契約書でリスク回避を行うことが可能ですが、CBDの特殊性やCBD原料から販売までの商流を理解する弁護士に依頼することがオススメです。
6 おわりに
有識者会議においては、上記のようなTHC規制に関する大麻取締法の部位規制や麻向法の成分規制がおかしいと指摘されたこともあり、THCという成分に着目した規制になるという方向性が示されています。
CBD弁護士としては、
・大麻取締法の「大麻」の定義をどうするのか
・THC基準が創設されるのか
が、気になるところです。
法律の改正がされれば、プレイヤーが増えてきて業界の様相が変わってくる気がしています。
もしCBD事業への参入を検討している会社さんやCBD事業をやっているけど、顧問弁護士がCBDのことを全く知らなくて説明するのがめんどくさいと感じている会社さんなどがあれば、ぜひご連絡ください。
HPのフォームや各種SNS、Eメール(legal@arashiroyasuta.com)からお気軽にお問い合わせください。
無料法律相談は実施していませんが、顧問契約や見積もりのためのZoom会議などは当然無料で実施しております。
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