top of page
  • 執筆者の写真新城 安太

【2022/3/7速報】HHC規制に伴う事業者・ユーザーの対応について

更新日:2022年3月8日



<対応のまとめ>

・事業者

・令和4年3月17日までに、HHC商品の在庫の廃棄処分をする必要があります。
・販売については、直ちに停止すべきです。
・令和4年3月17日までに、自社のECサイトやネットショップ、実店舗などでHHC商品に関する宣伝・広告物などを削除する必要があります。販売代理店にも同様の対応をするよう求めましょう。
・対ユーザーや対輸入元、対販売委託元との関係は、契約書や利用規約によります。速やかに顧問弁護士に契約書を見せて対応を検討しましょう。

・ユーザー

・令和4年3月17日までに、HHC商品の廃棄処分や使用をする必要があります。
・令和4年3月17日以降に、HHC商品を所持していた場合や無償有償問わずにあげた場合は、薬機法に違反します。
・既に購入して到着を待っている状態なら、購入先の事業者との契約や利用規約を確認しましょう。


HHC規制の概要


令和4年3月7日付省令により、いわゆるHHCが医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)2条15項の「指定薬物」に指定されました。この省令は、令和4年3月17日から施行されますので、HHCを取り扱う事業者やユーザーは至急の対応が必要となります。



(定義)
第二条
15 この法律で「指定薬物」とは、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。


HHCはどのように規制されたのか

HHCが「指定薬物」とされたことで、大きく2つのことが禁止されます。

事業者もユーザーも、令和4年3月17日以降に以下の禁止行為を行うことはできません。


①製造等の禁止(薬機法76条の4)
②広告の禁止(薬機法76条の5)


また、ペナルティは以下のとおりです。


①製造等の禁止

・業として販売や所持等をした場合:5年以下の懲役 or 500万円以下の罰金 or その両方(薬機法83条の9)
・ユーザーが「業として」ではなく、販売や所持等をした場合:3年以下の懲役 or 300万円以下の罰金 or その両方(薬機法84条第28号)

②広告の禁止

・2年以下の懲役 or 200万円以下の罰金 or その両方(薬機法85条第9号)

以下にて、具体的に禁止行為について、解説します。

①製造等の禁止


<何が禁止されるか>

HHCを医療等の用途以外のために、製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、使用することが禁止されます。


医療等の用途とは、以下の用途なので、現在HHCを販売している事業者さんがこれを理由に扱うことはほとんど不可能であるといえます(H19/2/28厚生労働省令第14号(最近改正:R1/8/29第35号)。


⑴ 国や地方公共団体の機関、大学、独立行政法人等における学術研究又は試験検査の用途
※事業者が単に「研究目的」と主張して所持等することは不可

⑵ 無承認無許可医薬品の疑いがある物品の試験の用途
※厚労大臣や都道府県知事やこれらから委託された検査機関が行うもの

⑶ 指定薬物等の疑いがある物品の成分検査の用途
※厚労大臣や都道府県知事やこれらから委託された検査機関が行うもの

⑷ 犯罪鑑識の用途
※警察等が行うもの

⑸ ⑴から⑷までの用途のほか、次の表の左欄の物にあっては、それぞれ同表の右欄に掲げる用途
(例:亜硝酸イソブチル及びこれを含有する物を元素又は化合物に化学反応を起こさせる用途)

⑹厚生労働大臣が人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがないと認めた用途


ちなみに、文言の定義としては以下のとおりと解されています。

・「輸入」:外国から日本に到着した貨物又は輸出の許可を受けた貨物を日本に引き取ること
・「所持」:物を事実上支配していると認められる状態をいい、指定薬物を販売・授与の目的で貯蔵し、陳列する行為も含まれる
・「購入」:対価を払って、その物の所有権の移転を受けること
・「譲り受け」:ある物の所有権を有する者の意思をもって、その所有権の移転を受けること。これには対価を支払うか否かは考慮されない

<法律抜粋>
(製造等の禁止)
第七十六条の四 指定薬物は、疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの(以下この条及び次条において「医療等の用途」という。)以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用してはならない。


<事業者のとるべき対応>

令和4年3月16日中までに、すでに在庫を抱えているHHCは廃棄するなどして処分する必要があります。

さらに、製造中のHHC商品や、販売中のHHC商品も全て中止する必要があります。

なお、令和4年3月17日以降にHHC商品を無償でプレゼントした場合でも、違法となるのでご注意ください。

すでにユーザーから受注済みで、未発送の商品の場合は、取引を中止すべきです。厳密には令和4年3月17日までは、そのまま発送することも可能ですが、販売先のユーザーが令和4年3月17日以降にHHC商品を所持していた場合には、薬機法に違反するので犯罪を抑止する観点から控えるべきです。このことを指して、薬機法違反の共犯に問われる可能性も否定できません。


この場合の返金処理などについては、ユーザーや事業者との売買契約や事業者が準備している利用規約によります。

契約書や利用規約の文言によりますが、基本的にはB to Bにおいて、「不可抗力条項」を適用して、返金しないということは認められ難いと思われます。

HHC原料や商品を海外から輸入している事業者は、以下の対応が必要です。

なお、本日付で税関を最終的に管轄する財務省に対してもHHCが指定薬物とされることは周知済みであるので、今後、HHCが通関する可能性は極めて低いと考えられるとのことです(厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課危険ドラッグ監視専門官への電話照会の結果)

⑴現時点で既に通関済みで、国内での受け取りを待っている状態:令和4年3月16日中までに廃棄処分をするか、使用する。厳密には販売することも可能ですが、販売先のユーザーが令和4年3月17日以降にHHC商品を所持していた場合には、薬機法に違反するので犯罪を抑止する観点から控えるべきです。

⑵現時点で通関待ちで、令和4年3月16日中に受け取り可能な場合:令和4年3月16日中までに廃棄処分をするか、使用する。

⑶現時点で通関待血で、令和4年3月17日以降に受け取り予定の場合:受取拒否を行った上で、廃棄処分していただく。(受取後、直ちに廃棄処分することも現実的にはあり得ますが、形式的には薬機法違反になりますので顧問弁護士に対応を確認しましょう。)

この場合、輸入元から返金されるのかどうかも、輸入元との契約内容によります。


<ユーザーのとるべき対応>

令和4年3月16日中までに、すでに手元にあるHHC商品を使い切るか、廃棄する必要があります。友人や知り合いにプレゼントすることもあり得ますが、プレゼントした相手が令和4年3月17日以降もHHC商品を所持していた場合には、その相手方が薬機法に違反しますし、薬機法違反の共犯に問われる可能性も否定できません。


また、既に発注も支払いも済んでいて、HHC商品の到着を待っている場合の対応は、基本的には購入した事業者との契約内容に従うことになります。

特に契約書や利用規約に同意していなかったり、契約書や利用規約にHHCが規制された場合の処理に関する規定がないなら、事業者のHHC商品を引き渡す債務が「履行不能」になったとして、ユーザーは契約を解除することができる可能性があります(民法542条1項1号)。この場合、契約がなかった状態に戻るので、ユーザーは返金を求めることができます。


②広告の禁止


<何が禁止されるか>

HHC商品の消費者向けの広告が禁止されます。


ここでいう「広告」とは、以下の2つのどちらも満たすことをいいます。

・指定薬物の販売等の営業活動に伴い顧客を引き寄せるために商品名、サービス、値段及び取引方法等について不特定又は多数の人に知られるようにしていること
・医療関係者等や指定薬物を医療等の用途に使用する者を対象として行つているものではないこと

そのため、SNSでの商品宣伝やECサイトにHHC商品を掲載することもこれに該当します。

<法律の抜粋>
(広告の制限)
第七十六条の五 指定薬物については、医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等(医薬関係者又は自然科学に関する研究に従事する者をいう。)向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として指定薬物を医療等の用途に使用する者を対象として行う場合を除き、何人も、その広告を行つてはならない。

<事業者の対応>

令和4年3月16日中までに、自社のECサイトやショップを見直して、HHC商品の項目を全て削除する必要があります。


また、販売代理店などの広告や商品ページ、店舗での販促物も全て削除するように要請すべきです。適切な措置を取らないことが、薬機法違反の共犯とされる可能性もあります(いわゆる不作為の共犯)。


【Q&A】

※今後も追加予定。

※2022年3月8日追記。


Q.これまでHHCを販売したり使用していましたが、これまでの行為も罪になるんでしょうか?

A.なりません。遡及処罰の禁止により、過去の行為に遡って、今回の改正が適用されることはありません。

Q.HHCはなぜ規制されたのでしょうか?

A.あくまで推測ですが、THC類似の幻覚作用や有害な精神作用があると厚労省に判断されたからだと思われます。
この推測は過去にツイートしているのでご覧ください。
https://twitter.com/cbd_lawyer/status/1467786949310259202?s=20&t=AwSWCRRzC2kzgogDqnXsjg 

Q.以前、HHCリキッドを友人からプレゼントされました。結局、使っていないんで処分したいのですが具体的にどう処分すべきでしょうか?

A.お住まいの市町村の分別方法に従って捨てましょう。捨てるとは、自宅のゴミ箱に捨てるだけでなく、ゴミ捨て場まで持っていきましょう。

指定薬物の「所持」とは、物を事実上支配していると認められる状態をいいます。自宅のゴミ箱に捨てるだけでは、まだあなたが事実上支配している状態なので「所持」と認められます。

また、あなたの管理権が及ぶ場所(例:自分の車や自分の管理している倉庫など)に置くことも物を事実上支配している状態といえるので、このような場所に置くこともやめましょう。

Q.天然の大麻草由来のHHCなら規制されていないと聞きましたが本当でしょうか?

A.違います。今回は、HHCの成分自体が「指定薬物」に指定されたので、天然であるか合成であるかに関わらず、「指定薬物」に該当します。


<参考文献>

・團野博「詳説薬機法第5版」(株)ドーモ,2020年10月14日

・堀尾貴将「実務解説薬機法」(株)商事法務,2021年3月10日

閲覧数:31,133回1件のコメント
bottom of page